旅は人を賢くする:旅想論 第一回

若かりし頃、中古車を購入して頂いたお客様へのご納車で愛媛に行った。当時はインターネットの環境もなかったので、雑誌の広告をご覧になってご購入頂いたお客様で、もちろん初対面である。私も愛媛県は初めての訪問、車両を積載車に積み込み夜昼かけてその方のお宅に到着した。

すると「こんなところまで来てくれてありがとう。お疲れさま、待っていたよ」と大歓迎を受け、地元のごちそうまでご用意していただいた。いい気になった私はそのうえお酒まで頂き、誘われるままにずうずうしくもお客様のお宅に泊めて頂いたのだ。いま思えば恥ずかしい限りだが、若い私はありがたくてうれしくて感謝の念で胸が詰まった。仕事を始めて間もない頃の頃、忘れられないできごとである。
 その後も様々な地に足を運ぶ機会があり、幾度か旅をするうちに「その県に一泊以上滞在したら、その地に行ったことにする」と自分なりに決めてしまっている。単なる通過ではなく、その地の香りと食を楽しみ、そこに暮らす人と会話することが大切だと常日頃“旅のうんちく”を話しているくせに、一泊ごときで行ったことがあると公言していたのだ。
 おかげさまで様々な地域を開拓してきた私も、残念ながらまだ行ったことのない県がある。高知県である。いままで高知県以外のすべての県にはなんとか一泊以上の経験がある。あとは高知に行きさえすれば全国制覇になるのだがなかなか機会に恵まれない。仕事がら全国を飛び回ることが多いので、制覇するだけなら少し足を伸ばしていってくれば済むことなのだが、ここまで来ると何かのついでという気になれないのだ。せっかく訪問するのであれば、誰かに会いに行くとか、のっぴきならない仕事があるとか、何か行くべき目的や理由を見つけたい。おかげで見知らぬ世界への想いがつのり、テレビの旅番組や旅行情報誌で高知県の話題が出るとつい見入ってしまう。行ったこともないくせに、情報だけはしっかり頭に入っているのだ。
“旅は人を賢くする” 私の持論である。旅は好奇心、新たな出会いと発見を求めて移動するのが旅だと思っている。

『桂浜荒ぶる海や四万十の里』

いつか訪れるであろう高知県に憧れ、四万十市にふるさと納税をしながら想いをはせている

文=高橋 宣行
キャンピングカーに携わること34年、プライベートでもくるま旅を楽しむ愛好家。くるま旅クラブ代表取締役のほか、かーいんてりあ高橋社長、マクレントジャパン会長を兼任。地域の観光開発にも注力し、長野市商工会理事 商業部会長、長野市観光振興協会委員も務めている