連載3回目となる今回は、快適なだけじゃない、もしもの時のキャンピングカーやアウトドアアイテムの活用法などについて、余談も交えながらお話しします。
“キャンプだけじゃない、災害時にも役立つキャンピングカーのお話し”
日本ではこれまで、キャンピングカーは贅沢な遊び道具の代名詞のように言われてきました。しかし地震や台風、長雨などの自然災害が多発している昨今、一部でキャンピングカーの存在価値が見直されはじめています。そこで今回はキャンプシーンだけじゃない、もしもの時のキャンピングカーの活用法についてお話ししたいと思います。
その1:キャンピングカーがライフラインを確保する
東日本大震災や熊本地震をはじめとした大きな災害の発生を契機に、キャンピングカーが非常時に生活の基盤を支えてくれる存在としても認知されるようになりました。自分や家族が避難、寝泊りする場所としての有用性は言うまでもないでしょう。災害時の停電や暗闇が恐怖を助長するという話しも耳にします。わたしたちのように日常的にキャンプをしていると、クルマはもちろんいろいろな道具を持っているし、暗さを楽しむことも知っています。アウトドアに興味がない方に、無理にキャンピングカーをお勧めするつもりはありませんが、キャンプをしない方もガスや電池式のランタンなどを用意して時々点灯して楽しんでみると、もしもの時にも安心ですよね。
キャンピングカーではごく当たり前の装備であるソーラー発電システムやサブバッテリーは、重要ライフラインであるケータイの充電ができることから、周辺の人たちの役にも立つとても素晴らしい装備といえます。キャンピングカーユーザーの中には発電機をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、より手軽なキャンピングカー用の「バッテリーとインバーターのセット」もお勧めです。私の店でも、普段はあまり注目されない(売れない)このセットが、災害発生直後には一気になくなってしまったりします。
ガスや電池式ランタンなど、家庭用電源に頼らない照明を、楽しみながら使用していると、いざという時に慌てずにすむ。
ケータイの充電や明かりの確保などにも利用できるソーラー発電システムやサブバッテリーは、災害時にも大いに役立つ。
ミスティックで取り扱っている「バッテリーとインバーターのセット」。キャンプ以外、もしもの時の備えにも最適な装備。
その2:命をつなぐキャンピングカー
熊本地震では、ご存知の通り「車中泊」に大きな注目が集まりました。私は発生直後に現地入りし、主に車中泊している方たちの支援をさせて頂きました。クルマがシェルターとしての役割を果たしていたのですが、コンパクトカーの中で家族4人が避難生活を送っているといった例も目の当たりにしました。こんな時にキャンピングカーを使えば、ストレスの少ない避難生活がおくれることは言うまでもないでしょう。
欧米では、災害時に自治体や国がキャンピングカーを使ってすみやかに被災者の避難場所確保に即応している例が多くあります。日本では災害が発生してから「仮設住宅」を建て始めるので、体育館などに設けられた避難所で長期間にわたり共同生活を強いられることもあります。キャンピングカーを活用すれば、プライバシーが確保され、フラットなベッドで眠ることができ、トイレやシャワーも完備した避難場所が、速やかに用意できます。そして役割が終われば解体することなく簡単に移動でき、ニーズのある次の現場に持ち込むこともできます。キャンピングカーは災害発生直後から被災者の健康を、そして命を護ることができる素晴らしい道具だと言えるのです。
熊本地震発生直後、乗用車で車中泊する被災者を支援した際のスナップ。網戸のアミを流用してクルマに簡易網戸をセットしたり、段ボールを使って座席の段差を補正、フラットなベッドを作るなど、車中泊を快適にするためのアドバイスをさせて頂いた。
アメリカの政府機関“FEMA”は、さまざまな大規模災害に際し、連邦機関や州政府・自治体との協力体制の元、被災者に対しキャンピングカーを使った住居の提供を行っている。仮設住宅を建てるよりもはるかに速やかな対応が可能である点に注目したい。
★読者の皆さんへのお願い
キャンピングカーの利便性、災害時の活用法についてよくご存じの本誌「旅楽」読者には、説明不要なことばかりだったかも知れません。そこで、皆さんにお願いです。このページに書かせて頂いた内容を、ご自身の経験談も交えながら、まわりのお友達や同僚の皆さんにお伝え頂きたいのです。自治体など公的機関の方とお話しする機会があれば、是非災害時のキャンピングカーの有用性について話題にして頂きたいのです。そうすることが、間違いなく災害時の備えになるのですから。
Dr.マサシこと、佐藤正
アメリカンなトラキャンから軽キャンパーまで、幅広いラインナップをもつキャンピングカーメーカー「ミスティック」の代表。プライベートでは年に一度の北海道ツーリングを欠かさないバイクフリーク。愛車もハーレーから250ccのエストレアまでバラエティ豊か。写真のアフリカツインと富士山は朝霧高原での最近のスナップ。